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2014年6月29日 (日)

ミラーニューロン(鏡神経細胞)

074

 梅雨空にクチナシの花が匂っている。クチナシの花に出会ったら、両手のひらを思い切り広げて、クチナシのまねをしてみよう。ひょっとしたら、クチナシのように手のひらが芳しく匂いたつかもしれない。

 大井玄さんの「病から詩が生まれる―看取り医が見た幸せと悲哀」(朝日新聞出版)を読み、心を打たれた。

 そのなかの「笑顔と笑うこと」という章に、「ミラーニューロン(鏡神経細胞)」の話が出てきて、「やっぱりそうか!まねすることは生きることの基本の基本なんだ」と膝を打った。

 「あくび」が伝染することはよく知られているし、誰もが一度は体験しているはずだ。それでいいのだ、あくびを見たらあくびをしよう。しかし、なぜだろう。テレビ画面のあくびまでこちらに移ってくるから、感染物質が移動して来ているわけではない。心理学的な現象ではあろうが、厳密に言うと「脳神経生理学」的な現象だそうだ。

 1980年代にイタリアの大脳生理学者がサルの大脳に「ミラーニューロン(鏡神経細胞)」を発見した。サルはすぐにほかのサルのまねをする。その「サル真似」の元凶が「ミラーニューロン」だと突き止められたわけだ。

 むろん、まねはサルよりも間違いなく人間のほうが上手(うわて)。しかし、人間の「ミラーニューロン」がサルよりもいっそう複雑精緻な構造を持つことは明らかだろう。ところが、人間の進化の歴史は、まねを次第に蔑むようになり、「独創」をやたらと持ち上げる方向に進んできた。それによって、共同体の絆が無力になってきた。文化の悲劇である。

 それはそれとして、ヒトもサルも他者の動作を見ているとき、自動的に脳の中で同じ動作をしている。そればかりか、「ミラーニューロン」の振舞いによって心の中にも同じ情動が生まれているのだ。

 他人の笑顔を見ると、それを見ているひとも自然に微笑んでいる。悲しんでいるひとを見て、思わずもらい泣きをする。他者への共感こそ、人間を人間たらしめているもっとも重要な心の働きであるとすれば、「ミラーニューロン」は何にもまして「人間の証し」なのだ。

 赤ちゃんの脳には、きっと働きの旺盛なみずみずしい「ミラーニューロン」が多量に存在しているに違いない。だから、赤ちゃんはまるで「鏡のように」ひとのしぐさをまねする。ひとの笑顔をじーっと見つめて、花のつぼみがほころびるように笑う。赤ちゃんはそうしながら「生きる」ことを学んでいく。

 老いて大脳皮質が磨り減っても、脳内から「ミラーニューロン」が消えないようにしたい。


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