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2013年9月

2013年9月24日 (火)

月下美人

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月下美人の花が咲いた。初めて見る月下美人の花にほとんど正気を失ってしまった。

前日の夜中、眠りのなかでふっと洋酒のような甘い匂いを嗅いで目が覚めた。「月下美人だ」と思って、上半身を起こして薄暗がりを透かして見たが、まだ蕾のままだった。その夜は、その香りが気になって、熱に浮かされたように「うつらうつら」しているうちに夜が明けた。「幻(嗅)覚」だった。

そして、その日の夜、勤めから帰ると、蕾がはちきれそうに膨らんでいた。夜9時ころ花弁が一枚一枚、結んだ手のひらの指を数えるように順に開き始めた。舞台のバレリーナが白い華奢な腕をゆっくりと広げるようにも見えた。その、まるで生き物のような「身振り」に見入ってしまった。

開いた花の匂いを嗅いでみた。遠い彼方から運ばれて来たような、身近などこにもないような、今まで嗅いだこともない不思議な芳香。甘い、お香のような匂い。前の晩の「幻の」匂いに似ているようでもあったし、しかしまったく違っているようでもあり、判断がつかなかった。

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月下美人は一夜でしぼんでしまうというので、寝るのを惜しむように、眠い目をこすっていつもより遅くまで起きていた。そして、翌朝、目を覚ますと花はまだ開いたままだった。朝の太陽と向き合う月下美人は、ちょっとくたびれて見えた。

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十六夜(いざよい)の月

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「十六夜(いさよひ)の雲吹き去りぬ秋の風」(蕪村)

今年は9月19日が十五夜の満月。夜8時頃にヴェランダに出てみると、あたりの風景が月明かりで白く輝いて見えた。写真は翌20日に撮ったから、十六夜の月ということか。月面の右下がすでに蔭の中に入り始めている。十六夜は、「いざよい」とも「いさよい」とも読む。いずれにしろ陰暦の話だから、蕪村の句の季節感とはズレがある。

「いざよふ」という古語は「ためらう」こと、「ぐずぐずして早く進まない」ことだが、むしろ「月の出を今か今かとじりじりしながら待つ気持ち」を表したのではなかろうか。電灯がなかった昔は、日が落ちると漆黒の闇。月明かりの夜はさぞや心和むものがあっただろうと思う。

『竹取物語』のかぐや姫は古人たちにとっては、遠くて、それだけに今よりずっと身近な存在だっただろうなと思う。「中秋の名月」に寄せた古人たちの深い思い入れが、私たちには無縁のものになってしまった。

2013年9月17日 (火)

帰心 矢のごとし

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9月の初旬、東京への出張を利用して西伊豆の戸田(へだ)に立ち寄った。戸田の浜から駿河湾越しに見た日没の風景。富士は暑い雲に覆われて姿を見せなかったが、前山のたおやかなシルエットが美しい。日が傾き始めてから、空と海の色彩の移り変わりをぼんやりと眺めていると、時の経つのを忘れた。

日が落ちきると、空には柔らかな肌色と青灰色の帯がしばらく残っていたが、海面は遠くが金属的な照りのある銀鼠(ぎんねず)色に、近くが李朝の白磁色に変わった。

細かなレース網のような波を切り裂くように、小さな漁船が港に戻ってゆく。船尾を落とし、舳先をぐっと持ち上げて進む様子に、「矢のごとき帰心」が感じられた。

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2013年9月16日 (月)

名にし負わば・・・エノコログサ、ヌスビトハギ、ヘクソカズラ

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エノコログサが道路わきの花壇を一面におおっていた。秋の野でいちばん目につく野草。いつも無視されたり、邪慳にされたり。とはいえ、子どものころには、エノコログサの穂を手のひらに乗せると、柔らかな毛が手のひらに快く、そっと「結んで開いて」をすると、その穂がまるで蓑虫のように親指と人差し指で作った輪の中からひょこひょこ顔を出した。エノコログサの語源は「犬っころ草」とか。なるほど、ころころした子犬のようにかわいい。

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マンション隣の空き地のフェンスに白い小さな朝顔が咲いている。マメアサガオというそうだ。その下にはヌスビトハギのピンクの花が今まっさかり。その名に似合わず可憐な花。その種子の小さな莢(さや)には鉤状の繊毛が生えていて、草むらをかき分けかき分け歩いたりすると、ズボンの裾にびっしりとヌスビトハギの実莢がこびりついて、ブラシくらいでは取れない。数百の莢を一つ一つ手で取るしかない。ヌスビトハギの名はその厄介な莢の形が盗人の足跡に似ているかららしいが、ひょっとしたら「秋の野は盗人のように抜き足差し足で歩くべし」という戒めかも。

そして下の写真は、ヘクソカズラ。これも秋の野山のなくてはならぬ脇役。

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茎と葉の悪臭のせいで「品の良くない」名前を背負わされてはいるが、花は小ぶりだが、なかなか凝った作りの美形だ。それもあってか、早乙女草の別称もあるそうだ。

野草の名にはそれぞれ、庶民の生活と夢が込められているようで楽しい。

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