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2012年4月20日 (金)

ヘフリガーの日本の歌を聴く

ヘフリガーが歌った日本歌曲集のCDを聴いた。ドイツ語訳の『この道』、『花』、『城ケ島の雨』、『さくらさくら』、『出船』などなど。

聴きなれた日本語の歌をドイツ語で聴くことにためらいがあったが、ヘフリガーの声が響き始めたとたんに、すべての先入見が消え去った。そこに深々とした色を湛えて広がっているのは、国も民族も超えた原初的な心の風景だった。

『出船』では、「無事で着いたら便りをくりゃれ / 暗いさみしい火影のもとで / 涙ながらに読もうもの」というフレーズが、

"Wenn du gut / angekommen, schreib mir einenn Brief! Im dunkeln Kaemmerlein / beim Kerzenflackerscheine hier / werd' ich ihn weinend lesen, Ach. waer' / ich bei dir! "

とドイツ語で歌われる。語彙・音数の多さから、ドイツ語は「何と説明的な」などと言ってはなるまい。日本語の詩にはないAch. waer' / ich bei dir! (ああ お前のそばにいられたら!)に込められた感情は、「くりゃれ」「ものを」という日本語表現と等価なのだ。あるいは、そう思わしめるのはヘフリガーの歌唱力、人間としての深さ、大きさなのだろう。

ヘフリガーは、私には何といってもカール・リヒター指揮『マタイ受難曲』の福音史家(エヴァンゲリスト)だ。初めてその声を聴いたときの感動が今も忘れられない。ヘフリガーの張り詰めたテノールは、繊細にして豪放、リリカルにしてドラマティック、明確にして深い陰影に富んでいた。『マタイ』を繰り返し聴いた日々のことを懐かしく思い起こした。

 ... エルンスト・ヘフリガー,ERNST HAEFLIGER,ユニバーサル

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