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2011年7月23日 (土)

放射線と感染症

中村仁信『低量放射線は怖くない』を読んだ。著者は大阪大学で長年放射線医療に従事してこられた医師。放射線被曝によって体内に発生した活性酸素が遺伝子(DNA)を損傷し、発ガンのリスクにつながる。ただ人間の周囲には、放射線だけでなく、活性酸素を生みだすリスク要因がたくさんがある。例えば、運動による過呼吸もそうである。急激な慣れない運動は、やはり「年寄りの冷や水」で避けた方がいいらしい。

しかし損傷を受けた遺伝子も、それを修復する免疫機構が人間には備わっている。免疫力を高めることでがんの発生は抑えられる。低量の放射線はむしろ免疫力を高めるというのが、著者が長年の研究と臨床経験から得た結論である。

というより、現実には喫煙やストレスによる発ガン・リスクは放射線による発ガン・リスクよりはるかに大きい。それを棚上げにして、低量放射線に過度に敏感になったり、無用の恐怖心を煽るのはどうか?まず、放射能、放射線とは何かを知ることから始めようというのが中村先生のご意見である。

そして、山本太郎『感染症と文明-共生への道』を読んだ。「目から鱗」ではなくて、「やはりそうなのか」というのが私の感想だった。

人類が感染症とともに歩んできた歴史は長い。農耕、定住、家畜、人口爆発という人類の文明化の過程こそ、じつは感染症の温床であった。その過程で人類は幾度も破滅に瀕した。すさまじい戦いの結果、ペスト、ハンセン病、天然痘、ポリオはほぼ根絶された。今や、疫病のない明るい夢の未来が開けたかと誰もが思った。

が、その矢先、突如思いもかけない強力なウイルスの出現に息を飲んだ。エボラ出血熱、エイズ、サーヅ、鳥インフルエンザなどなど。大河の氾濫を恐れて堤防を高くすればするほど、洪水の被害は壊滅的になる。感染症との戦いの手を緩めることなく、しかし他方では感染症との持続的な(戦略的)共生の道を探るべき時代に来ているのではないか、と著者は言う。

放射線と感染症、ともに医療の最前線で体を張って戦い続けてきた著者たちの言葉は重い。そしてまた、謙虚さに満ちている。

低量放射線は怖くない 低量放射線は怖くない

著者:中村仁信
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感染症と文明――共生への道 (岩波新書) 感染症と文明――共生への道 (岩波新書)

著者:山本 太郎
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文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

放射線に関しては、いま「クエスチョンマーク」だらけですthink
子供の許容量は違う、とか、子供には別の基準を用意すべき、とか、いろいろ言われているのを聞いているうちに、私もなるべく避けるようになりました。
はっきりできないのならできない、安全なら安全、と言って欲しいのですが、どうも、いつまで経ってもグレーゾーンが広いというか。。。困ってます。

専門家と呼ばれる人たちばかりなのに、人によってどうしてこうも安全基準値がかけ離れているのやら、じつに不思議ですね。
データや情報を商品のように扱うマスコミ、それを駆け引きの材料にする政治家、ひとり歩きする数値や肩書、それらに振り回されるのは、もう嫌ですね。では?
データや情報の中身を吟味できるだけの素養を持ちたい。それが叶わないときは、「それを口にしている人の顔をまずはじーっと見つめる、それしかないか」というのが私のいつもの流儀です。

先生こんにちは。二度も被爆した国でありながら、多くの優秀なはずの専門家が推進してきた原子力政策のなかで、本当は人類が放射性物質を発見してからの歴史はまだ浅く、専門家も本質を分からないまま政策として推進し、これだけの被害を簡単にもたらした原発の技術も人の理解も、理解の仕方も、この流れの中にいては知ることも難しく、未熟だったといわざるを得ないと思っています。放射線が人体に何をするのか、とくに低量では長期にわたり調べきれていないから、だれもはっきり言えないのでしょうが、長い進化の歴史で浴びてきた以上の放射線量には、DNAの2重らせんという素晴らしい構造でさえ、無意味になってしまうでしょうね。生殖期間を終えた大人は食べても、近づいても次の世代を守り、社会を循環させ、子供たちは遠ざける、食べさせずに守りたいと思います。大変な時代になってしまい、悲しいことですが、生き物は次の世代のことを考えて、笑顔で生きていかなければなりませんね。

めだちゃん、こんばんわ。お元気ですか?
「炎暑」の毎日ですね。
放射能からお子さんを守らなければならないお母さんには、つらい毎日でしょうね。
それにしても、家族や大切な人の未来を守るためには、強く賢くあらねばならないことを身にしみて感じさせられるこの頃です。
私は4月以降、4か月で4年分くらいの出会いや経験を重ねています。
半面、自然と接する時間が少なくなったのが残念です。勤めの行き帰り、路地の鉢植えに珍しい植物を見つけて喜んでいます。

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