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2010年10月28日 (木)

ヴァルプルギスの夜

1777年12月の「ハルツの冬の旅」がゲーテ生涯の大きな転機となったことが、ハルツ地方への旅へと私の背中を押したのだった。

ブロッケン登攀の帰途ゲーテは、夕映えに黄色く染め上げられた雪原で岩影がエメラルドグリーンに輝くのを見た。その鮮烈な体験がのちに『色彩論』研究へと結実してゆく。残念ながら、今回のブロッケン行では、「色づいた影」にも、有名なブロッケン現象にも出会えなかった

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巨岩がごろごろする急な傾斜を幾筋もの渓流がも駆け下ってゆく。濃密な針葉樹林が途切れたところが頂上だった。旧東独時代の殺風景なコンクリート建造物が荒涼をいっそう際立たせていた。

ここが、『ファウスト』に出てくる「ヴァルプルギスの夜」の舞台だった。ファウストとの間に生まれた赤ん坊を抱え錯乱し彷徨するグレートヒェンを尻目に、あろうことかファウストは山中の魔女たちの淫靡をきわめた狂宴の中を物欲しげにうろつきまわっていたのだった。ふと彼の目に、両足を鎖で繋がれた蒼ざめた美しい娘がゆっくりとこちらの方に近づいてくるのが見えた。頸のまわりにはひと筋の赤い糸が巻きついていた。

ブロッケンのいっさいの感傷を峻絶するような景観。ゲーテはこの荒涼たる裸形の自然と向き合ったとき、自身の内なる修羅と向き合っていたのだとそんな気がした。

ヴェルニゲローデの町の背後の丘に、小規模ではあるが風格を備えた城がそびえ立っている。城の脇の小さなみやげ物店は魔女の館風にしつらえられていた。日が傾いて薄闇が広がり始めたころ、一人で店番していたお嬢さんが観光客の中年男性を「ちょっと手伝って」と呼び止めて、店頭の魔女人形がたくさんぶら下がった格子棚を店内に運び込んでいた。「この娘も可愛い魔女さんだ」と、思わず「メフィスト笑い」がこみ上げた。

ゲーテ時代の魔女たちも、素顔はじつはこのお嬢さんみたいだったりして!?

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