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2010年2月26日 (金)

白梅

このごろ近くを散歩しているとどこからともなく梅の香が漂ってきて、ふと足が止まる。見ると、民家の庭先に白梅が今を盛りと咲いている。陶然として我を忘れる。

呉春の「白梅図屏風」を見たとき、その梅の木が此岸と彼岸の境に咲いているようだと思った。考えてみれば、呉春の白梅に限らない。白梅には何か人の心を異界へと誘(いざな)うような趣きがある。

四十年以上も昔のことになるが、正月にひとりで京都西山の十輪寺、善峰寺を訪ねたことがあった。山道を下ってくると、花ざかりの大きな白梅の木が、林間の広々とした空地に、まるで世界から忘れ去られたかのように立っていた。その情景に気圧(けお)されて、しばしその場を動けなかった。

そのあと方向感覚を失って山中をぐるぐると彷徨(さまよ)った。同じ方向に進んでいるつもりが、どういうわけか元の場所に戻ってくる。何度かそれを繰り返した。午後の陽ざしが傾き始め、焦りから山道をはずれて沢に下りると、沢には雪が残っていた。「このまま行き倒れるのでは」という考えが、ふと脳裏をよぎった。

それ以来、咲き誇る白梅の情景が時おり夢に出て来るようになった。怖い夢ではない。ただ、夢の中でも身動きできずに佇むばかりである。

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コメント

すごい経験ですね。梅の花に魅入られたようなお話しで、ゾクッとしました。
梅園の梅は背が低くてあまり好きではありません。好き勝手に伸びた枝ぶりの、この写真のような梅の木は大好きです。

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