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2009年10月15日 (木)

野分

先週半ば、台風17号が紀伊半島をかすめて愛知県に上陸、中部地方から東北地方を縦断した。大阪でも夜半窓を打つはげしい風雨の音に目が覚めた。翌日、近くの公園を歩くとケヤキやクヌギの枝が折れ、道をふさいでいた。

 鳥羽殿へ五六騎いそぐ 野分かな(蕪村)

冬の訪れを背中に感じる野分である。俳人は、身の細るような思いで夜明けを待っている。すると、暴風雨の中に疾駆する馬の嘶(いなな)き、蹄(ひづめ)の響き、荒々しい人声、武具の鳴る音が聞こえてきた。雷鳴がとどろき稲妻が走る。一瞬、夜の闇に騎馬武者の姿すら浮かび上がったのだった。 

鳥羽殿は、洛南の鳥羽離宮のこと。平安末から鎌倉時代にかけて後白河法王と清盛、後鳥羽上皇と鎌倉幕府などの熾烈な権力闘争の舞台となり、多くの人命が失われた。蕪村のこの句など読むと、俳句はまたバラード(物語詩)の世界に適したジャンルのひとつではないかと思われてくる。バラードは驚くべき事件の核心を切っ先鋭い言葉で具象的に描き出す。絵画と音響が鋭くせめぎあう。俳句は、世界最小のバラードであろう。

絵画性と音楽性とが見事に融合するこの句から、ヴァグナー「ワルキューレの騎行」の響きが聞えたと言えば、蕪村は苦笑することであろう。

写真は、千里川沿いの姫ホタルの生息地。

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