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2009年10月10日 (土)

吾亦紅(われもこう) 

吾亦紅は花ともいえぬ地味な秋草である。私の子どもの頃には、野原、田の畦、川辺のどこにでも見られたように思う。ひょろひょろと伸びた茎が枝分かれしてその先に赤く染まった<つくし>のような花をつける。今は、生け花の花材として店頭に並んでいると聞く。吾亦紅はステータスを上げたのか、下げたのか、わからない。

秋の風情をカメラに収めようと近くの里山を歩いた。しかし、お目当ての吾亦紅は、見つけられなかった。もう都市近郊からは姿を消してしまったらしいと諦めた。すると途端に、齋藤史歌集に吾亦紅を見つけた。

 人を瞬(またた)かすほどの歌なく秋の来て 痩吾亦紅(やせわれもこう)それでも咲くか(齋藤史)

老境にさしかかった歌人の諧謔を交えた自己批評だと思われるが、「痩吾亦紅それでも咲くか」とは烈しい。しかし、そこには野に捨ておかれ、かえりみられることない「吾亦紅」との秘めやかな連帯がふつふつと滾(たぎ)っている。

カメラをしばし脇において、秋の野に痩身を晒すわが身こそ「痩吾亦紅」だと思った。すると笑いがこみ上げてきた。

齋藤史のもう一首。

「おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくようにゆかぬなり生は」

今日、吾亦紅を探して枳殻(からたち)の生垣に行く手を阻まれた。

Photo_2 

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