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2009年10月23日 (金)

錦秋(きんしゅう)

私は「朝日に染まる桜」よりも「秋の夕日に照り映える紅葉」の方がずっと好きだ。

「秋の夕日に照る山もみじ」という小学唱歌は、高野辰之作詞、岡野貞一作曲で明治44年(1911)に発表されたそうだが、私の小学校時代はまだまだヒットソング(?)の位置を保っていた。音楽の授業でも習った。この歌を知らない日本人など当時誰一人いなかったはずだ。今はどうなっているのだろう?それにしても、小学唱歌といわれるものの「不思議な生命力」には驚かされる。日本人の歴史と人格の基底に触れているからだろう。

この歌(『紅葉』という表題らしい)が好きという人は、私より前の世代、同世代((昭和前期生まれ)にはきっと多いのではなかろうか。私も、もっとも好きな唱歌の一つである。これを口ずさむと、体の内側にほのかな温もりを感じる。

十月半ばから十一月末にかけてのこの季節、足早にたそがれてゆく夕刻になると、足もとから冷えが這い上がってくる。小学生の私は、一方では「家恋し」の気持ちに駆り立てられながら、他方では裸電球のもとでの寒々しい食卓の風景を脳裏から振り払いたかった。あまり家に帰りたくなかった。貧しかった。そして子供なりに、その貧しさに引き裂かれていたのだった。私たち同世代の少なからずが共有する体験だろう。

夕日に照らされて鬱金(うこん)色に輝く紅葉の山肌を切ない気持ちで眺めながら、空気に残るほのかな温もりにいつまでも浸っていたかった。私はほとんど意味もなく、地面に散りしいたサクラやイチョウ、カエデやケヤキの落葉、クヌギやカシのどんぐりを拾い集めポケットをいっぱいにした。

今もその感覚が残っていて、色鮮やかな落葉を見つけると、何枚も何枚も拾い集めて家に持ち帰る。そして、色彩のグラデーションにいつまでも見入っている。

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