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2009年8月12日 (水)

『カビリアの夜』

フェリーニの『カビリアの夜』(1957)を観た。ローマの街頭に立つ娼婦カビリア(ジュリエッタ・マシーナ)の無垢な魂の遍歴を描いていて、心に深く沁み入る作品だった。カビリアの「無垢」は、「愚しさゆえの」無垢では断じてない。「無垢」であることを「愚かしさ」としてしか受け止められない世界が一方にあり、他方にはその惨めな世界を力いっぱい抱きしめるカビリアがいる。二枚目男優の豪邸に連れ込まれたカビリアは、歩くことを覚えたばかりの幼児のような不器用さで長い階段を上ってゆく。演じるジュリエッタ・マシーナは、生きることに不器用なカビリアををいじらしくも晴れやかに演じきって、その魂の水底に湛えられた愛と叡智の光をほのかに浮かび上がらせた。男に<またしても(2度目!)>身ぐるみ剥(は)がれたカビリアは、雨のローマの街頭に再び立った。マスカラが雨に溶け、まなじりに黒い大粒の涙が垂れている。しかし、カビリアはかすかに微笑んでいる。

 「水底に うつそみの面わ 沈透(しず)き見ゆ 来ぬ世もわれの寂しくあらぬ」(釈迢空)

カビリアの夜(DVD)

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