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2009年8月23日 (日)

水の精 オフェーリア

非業の死を遂げた父王の復讐を誓って狂気を装う王子ハムレット。王子の心意を測りかね苦悩から絶望へと追い込まれてゆくオフェーリア。父ポローニアスを愛するハムレットの剣で殺されたオフェーリアは狂死する。

 「柳の木が一本川の上に横にのび出て、その裏白(うらじろ)を水鏡にうつしているところへ、あの子が来ました。きんぽうげ、いらくさ、ひなぎく、はしたない羊飼どもが下卑た名で呼びますが、清い乙女らは『死人の指』と呼んでいる紫の花(紫蘭のこと)などから作った花環を手に持って来ました。そして、その花かずらを垂れさがった枝にかけようと、柳の木によじのぼれば、枝はつれなくも折れて、花環もろとも川の中にどーっと落ち、もすそは大きくひろがりました。それで暫くは人魚のように水の上に浮いてその間、自分の溺れるのも知らぬげに、水に住み水の性と合っているもののように、しきりに端唄(はうた)を口ずさんでいましたとやら。でも、そのうち、着物は水を飲んで重くなり、可哀そうに、美しい調べの声が止んだと思うと、あの子も川底に沈んでしまい、無残な死を遂げました。」(『ハムレット』市川三喜、松浦嘉一訳 第4幕 第7場)

「人魚のように」「水に住み水の性に合っているもの」としてのオフェーリアは、水辺の可憐な花のように、水から生まれ水へと帰ってゆくのである。よく知られたジョン・エヴァレット・ミレーの絵には、さまざまな水辺の美しい花たちが描きこまれ、オフェーリアの帰郷を寿(ことほ)いでいるかに見える。

アルベニスの『パバーナ・カプリーチョ』を聴いていると、せせらぎのさざめきと、草花のおしゃべりと、生のしがらみから解き放たれてゆくオフェーリアのあどけない歌声が響いてくるかのようである。

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