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2009年8月 7日 (金)

竹取物語

『竹取物語』のかぐや姫の昇天の場面は、何度読んでも涙を誘われる。

 「八月十五日ばかりの月に出で居て、かぐや姫いといたく泣き給ふ。人目も、いまは、つつみ給はず泣き給ふ。(・・・)『をのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり。(・・・)いまは帰るべきになりければ、この月の十五日に、かのもとの国より、人々迎えにまうで来んず。』」

 「かかる程に、宵うち過ぎて、子(ね)の時ばかりに、家のあたり昼の明(あか)さにも過ぎて光りわたり、(・・・)大空より人、雲に乗りて下り来て、(・・・)立ち列(つら)ねたり。」

 「かぐや姫言ふ、『ここにも心にもあらでかく罷(まか)るに、昇らんをだに見おくり給へ』(私も心にもなくこうしてまいりますのに、せめて天に昇るのだけでもお見送り下さい)(・・・)うち泣きて書く言葉は、『脱ぎをく衣(きぬ)を形見と見給へ。月の出でたらむ夜は、見おこせ給へ(月の方を見上げて下さい)。見捨てたてまつりてまかる。空よりも落ちぬべき心地する』と書きをく。」

いつくしみいつくしみ育てた子を空へ帰す竹取の翁と媼(おうな)の心はいかばかりか。長女を処女(おとめ)のままに喪った五島美代子の歌を想う。

 「吾に来し一つの生命まもりあへず空(くう)にかへしぬ 許さるべしや」(五島美代子)

 「うつそ身は母たるべくも生(あ)れ来しを をとめながらに逝(ゆ)かしめにけり」(同)

『竹取物語』に取材した手塚治虫作品に、月へと帰る宇宙船から地球上に身を投げるかぐや姫を描いたものがあった。40年以上にわたって探し続けているが、まだ再会していない。かぐや姫が墜ちてゆく地上の空漠たる風景が彼女の悲しみを語って、忘れがたい。

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