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2009年6月 7日 (日)

内山龍雄先生のこと

理学部の内山龍雄(りょうゆう)先生が突然、私が助手を務めていたドイツ文学研究室に来られて、まことに辞を低くして、ドイツ語の文法に関する教授を乞われたとき、初対面でもあり、先生のことについて私は何も知らなかった。身長180センチ、体重80~90キロはあろうかという巨躯に圧倒された。「浜松高等学校以来、ドイツ語から離れておりましてね。いま、翻訳で苦労しております」ということだった。なかなかどうしてそのドイツ語力には侮りがたいものがあることは、質問の的確さですぐにわかった。「一を聞いて十を知る」理解の速さと正確さには驚嘆すべきものがあった。以来なんども直接足を運ばれたり、電話をしてこられたりで、ずいぶん親しくお付き合いさせていただいた。豪放磊落、稚気に富むとは先生のような人を言うのであろう。いつも老眼鏡を紐で首から下げておられた。忘れてはいけない予定など、大事なことは手のひらにペンで書き込んでおられた。「今日は裏のフェンスを乗り越えて大学に入って来ましたよ」と言っておられたこともあった。あるとき「今日はいいところへ行きましょう」と、ご自分の運転する車で箕面の「ミスタードーナッツ」に連れて行ってくださった。当時(1970年ごろ)、箕面店は「ミスタードーナッツ」の日本での開業第1号店だったはずだ。その頃には、先生が卓越した理論物理学者であることを知っていたが、車の中で「ちょっとした手違いで自説の発表が遅れてノーベル賞を逃しました」と笑っておっしゃったときには、<私のために>先生にノーベル賞を取ってほしかったと心底思ったものである。それくらい、私は先生のことが好きになっていた。

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