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2009年6月11日 (木)

マリリンがお好き

1960年の安保闘争とその挫折は、日本現代史の大きな曲がり角だった。憲法学者の黒田了一氏(のちの大阪府知事)がわが高校にまでアジ演説に来られた。高校1年の私もデモに参加した。政治の熱砂が吹き荒れていた。そして、挫折。

マリリン・モンローが『荒馬と女』を遺作としてNYのアパートで変死したのは62年のことである。事故死とも自殺とも他殺とも言われる。一つの時代の終わりを象徴するできごとであった。「マリリン・モンロー・ノーリターン」という野坂昭如の熱唱があるが、政治の高熱にまだ浮かされていた若者には、「マリリン・モンロー・ノータリーン」と聞こえた。

そんなモンロー像を一変させてくれたのはイギリスの監督ニコラス・ローグの『マリリンとアインシュタイン』(1985)だった。NY地下鉄の送風口の風でスカートがまくれ上がるシーン(『7年目の浮気』)を撮り終えたマリリンは、その夜、近くのホテルに泊まっていたアインシュタインを突然訪ねて行く。そして、一般相対性理論の完成に余念のないアインシュタインに向かって、直前にコンビニで買った懐中電灯やら風船やら列車模型やらを動かしながら、マリリンは一心不乱に相対性理論を説明をしてみせる。「まだ特殊相対論だけだけど」と、一途さとはにかみが混じった笑みを浮かべながら。20世紀のシンデレラと王子が出会う特上のメルヒェン。マリリンを演じるテレサ・ラッセルは、ほとんど<入神>の演技であった。

さて、まくれ上がったスカートの下に見えたものは?通風口の鉄格子の下で巨大扇風機を動かしている作業員が「何が見えた?」と隣の作業員に訊く。訊かれた男は目を潤ませて放心したように、「神の顔が見えた」とつぶやく。まことに、可憐と無垢、そして無私の悲しみの表層をまくり上げてみれば、またしても可憐と無垢と無私の悲しみのモンローが出てくる。スカートをどこまでまくってもみても、出てくるのは<深層>ではなくて<表層>なのだ。しかし、その<表層>に神の顔が映じていることは、見る者が見ればわかる。

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