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2009年6月15日 (月)

「くせに」考

「知ってるくせに」とか「あんなに約束したくせに」のような「・・・くせに」というせりふは、どこか艶(つや)めいて人肌臭がする。仏頂面をしてすねてみせるが、ちょっと未練心ものぞかせる。女性の口からなら許せるが、男の口からあまり聞きたくないせりふだ。(ジェンダー論の論客から叱られそうですが・・・。)

一方、「いい人なのに」とか「今日は来るはずなのに」のような「のに」という言い回しとなると、これはどこか醒(さめ)て突き放した感じになる。

この違いはどこから来るのか。「くせに」の「くせ(癖)」が「くせもの」のような気がする。私が日ごろ座右に置く『岩波古語辞典』によれば、「くせ」とは、

<ひとにいやがられるような、異様な臭いを持つ意のクサ(臭)の変化形であろう。>そして、語義として「くさみ。ゆがみ」の他に、「特に際立って強い、よくない性癖」が挙げられて、『沙石抄』から「人ごとに、心中にも、身の業にも、愛し好みて捨てがたく忘れがたき事あり。これを癖という」という用例が引かれている。これでわかった。「くせ」はもともと、臭み、ゆがみ、嫌み、苦みなのだが、ところがどっこい、人間関係(特に男女の仲)ではそれが何より「愛し好みて捨てがたく忘れがたき事」となる不思議。「あばたもえくぼ」だったものが、「くせに」と言い出すようになると「えくぼもあばた」に化して、難「癖」をつけたくなってしまうのである。

「くせに」と「のに」の間でバランスを取るしかない。

岩波古語辞典

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