« ウソ発見器 | トップページ | 銀の滴降る降るまわりに »

2009年6月 4日 (木)

ライラックの咲くころ

6月はライラックの季節である。トルストイ『復活』のなかで、主人公の貴族ネフリュードフが下女のカチューシャを誘惑する夜(朝まだきだったかもしれない)、庭園にライラックのむせ返るような匂いが立ち込めている。すべてのあやまちは、ライラックの匂いのせいではなかったか、ライラックの花を見るとそんなことを思う。

ある殺人事件の審理に陪審員として出席したネフリュードフが目にしたのは、裁かれるカチューシャの姿だった。誤審に基く裁判にネフリュードフは抗うすべもなかった。判決の日、法廷入り口の敷居から裁判長席までの歩数をしきりに気にする裁判長の姿をトルストイはさりげなく描き込んでいる。彼は縁起かつぎなのだ。まるで田舎芝居にしかすぎない裁判の無慚(むざん)さ。ライラックの記憶とひとつになって、忘れがたい場面である。

300pxlilac_28229

« ウソ発見器 | トップページ | 銀の滴降る降るまわりに »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1221163/29950206

この記事へのトラックバック一覧です: ライラックの咲くころ:

« ウソ発見器 | トップページ | 銀の滴降る降るまわりに »

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

星座 (リンク集)

無料ブログはココログ