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2009年6月27日 (土)

ライアンの娘

デヴィッド・リーン監督『ライアンの娘』(1971)は、私の最も好きな映画の一本である。

第1次大戦下、激化する対英独立闘争の渦中にあるアイルランドの寒村を舞台に、愛の情念に翻弄される娘の悲劇をまるで<荒々しく美しい自然の一齣(ひとこま)>のように描き出している。ロージー(サラ・マイルズ)は村の居酒屋の娘で、慕っていた小学校教師ショーネシー(ロバート・ミッチャム)と結婚する。しかし、年齢の離れすぎた夫との結婚は、彼女の思い描いていたものとは違っていた。夫との静かすぎる生活に飽き足らず、ロージーは駐留してきた英国軍将校との不倫に走る。

アイルランド西海岸ディングル岬の高い崖の上を歩む若い女の手から突風がパラソルを吹きさらってゆく。パラソルがまるで白い蝶のように身を翻しながら大西洋の逆白波立つ海原に落ちてゆく冒頭のシーンは、息をのむように美しく、忘れがたい。それは、大自然に向き合う人間存在の頼りなさ、はかなさ、と同時にその小さな存在の可憐さ、いじらしさを何より雄弁に語り尽くしている。

たそがれどき、自宅裏の英軍駐屯地に将校の姿を認めたロージーは、その人影に向かって白ユリの畑を駆け抜ける。彼女のスカートを染めた白ユリの黄色い花粉。それを見たとき夫は、すべてを悟ったのだった。

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