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2009年5月28日 (木)

シテール島への船出

長身・痩躯・白髯の老人がウクライナ号のデッキからヴァイオリンのケースを脇に抱えて長い鉄梯子をゆっくりと下りてくる。雨にぬれた埠頭に立った彼は、出迎えた息子と娘に向かって「エゴ・イメ(わたしだよ)」と呼びかけた。32年ぶりのギリシアへの帰郷。若き日スピロはパルチザンの闘士として軍事政権から死刑判決を受け、ロシアに逃れた。そのために若妻カテリーナが身代わりとして服役した。<私が私でありうる>ために戦ったことへの自負と、そのために妻子を打ち捨てたことへの拭いがたい負い目が、「エゴ・イメ」に込められていた。しかし、、解放されたはずの祖国ギリシアはスピロの「私(エゴ)」を拒む。ただ妻のカテリーナと、パルチザンでともに戦った友パナヨティスだけが、スピロの「私」を抱きしめてくれる。家の玄関前で待つカテリーナはおずおずと近づいてくるスピロに、ひとこと「ごはん 食べた?」と訊く。

山上の墓地をめぐりながら、「ヘーイ ヨルゴ、ヘーイ レニ、ヘーイ ディミトリ」と戦友たちひとりひとりの墓碑に向かって声をかける。パナヨティスが口ずさむ「赤いりんごが40個 いとしいお前 ハンカチに包まれて」の歌に誘われて、スピロは舞う。両腕を翼のように高くかかげ、山頂を荒鷲のように旋回する。バックに広がるギリシアの空の広さ。

村人とのトラブルで国外退去命令を受けたスピロは、船便を待って吹き降りの沖合のブイに留め置かれる。カテリーナはスピロと離れることを拒み、夜明けのブイに乗り込む。シテール島は、ギリシア神話の至福の島である。アンゲロプロス監督(ギリシア)の映画。

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