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2009年5月27日 (水)

人は生きて別るる

大学2年の夏、友人と信州を旅した。夜、大阪を出て岐阜駅の待合室で仮眠。翌朝、高山から乗鞍を越えて上高地の徳沢ロッジで一泊。早朝、ロッジの外に出ると、靄(もや)の立ち込めた白樺林ごしにバラ色に染まった北アルプスの山なみがまじかに見えた。心が震えた。その日は、聖(ひじり)高原の湖畔のホテルに泊まった。夕食後、友人と恋愛論を戦わせた。愛は、対象への価値判断に基づいているのか否か。今から考えると、空疎な「言葉遊び」にすぎない。しかし、そのときは真剣で議論は深更に及んだ。互いに一歩も譲らなかった。言葉が途切れがちになり、ついに沈黙が訪れた。翌朝、友人は北へ、私は南へ向かって旅立った。その友人とはそれっきりになった。「決然と別れてうしろを振りかえらぬ」ことに、若さの倨傲(きょごう)と矜持があった。

「やがて死が堰(せ)き隔てむに忘失の刻(とき)あり 人は生きて別るる」(稲葉京子)

「生きて別るる」が、ひとの定めである。その決断に賭けることで、人は人生の階段を上ってゆく。とはいえ、この年になると「忘失」したはずのひとびとの姿が、また近づいてくる。穏やかな表情で。

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コメント

随分上質のブログに出逢えたものです。
小生の力では、読み切れないかも知れません。でも、考え方の体系を学ぶ読本にさせて下さい。
田舎絵描きを続けるうちに、誰もが体験する齢の意識が生まれてくる年となりながら、依然、作品作りに明け暮れています。
絵だけを並べる、ブログでの「365日展」を目論み、1カ月ばかりが過ぎました。気が向きました時に「風の樹人日記」を、ふらり、ご訪問頂ければ光栄です。
呟きも時には・・。が目途です。

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