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2009年5月29日 (金)

渡る

最近では「渡り」というと、官僚の天下りのことをいう。彼らは「世渡り上手」なのだ。「渡り鳥」「渡し舟」などの美しい言葉が、退職官僚に食いものにされてはかなわない。直径のことを「差し渡し」というように、「渡る」とはそもそも最短距離を移動することを言ったらしい。「橋を渡す」というのも、そのためである。寅さんは「渡世人」、のらくらとぶらぶらと生きているように見えて、心情においてはつねに最短距離をひたむきに駆け抜けているのである。

 「人言(ひとごと)を繁(しげ)み 言痛(こちた)み 己が世に 未だ渡らぬ朝川渡る」 (万葉集 但馬皇女(たじまのひめみこ)の歌)

(世間の口の端がうるさくて苦しいので 生まれてこのかた一度も渡ったことのない 朝の川を渡ることだよ) 高市皇子(たけちのみこ)の宮にありながら穂積皇子への熱い思いを断ち切れず、但馬皇女はまだ朝靄の立ち込める飛鳥川を裳裾を濡らしながら渡った。内に秘めた決意とひたむき。人生の「橋を渡る」とはそういうことだ。

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